危険運転致死傷罪

皆さんは最近危険運転致死傷罪なる刑罰が新たに設けられたのをご存じだと思います。
この刑罰により「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処せられ、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処されることとなりました。


この刑罰が追加されたのは、従前刑罰では、いかに酔っ払った状態で、何人の人を殺しても、基本的に業務上過失致死罪 にしか問えず、原則最長で5年の懲役、ひき逃げなど他の罪を 併合罪加重しても、最大7年6月の懲役に問えないことから、それではあまりに被害者の人権を無視するものだとして設けられたものであります。

最近は、この刑罰で処罰されたとかというニュースを目にするようになりましたので、気になったことを若干書きます。

最近目についたのが、2007/12/19、神戸地裁で、ひき逃げと衝突により計3人が死亡した飲酒運転事故で懲役23年の判決が下りたという事件でありました。被害者の遺族はこれでも軽すぎると言っていたようでありますが、私の眼から見るとこれまでと比べようもなく重い処罰がなされるようになったものだとの印象を受けました。

ところがごく最近、福岡地裁が、飲酒運転の車に追突されたRV車が海に転落し幼児3人が死亡した事故で、検察側に業務上過失致死傷(前方不注視)と道交法違反(酒気帯び運転)の罪を予備的訴因(訴因とは要するに起訴状に書かれた検察の主張としての事件事実であって、裁判はこの主張に合理的に疑いを入れることができないかということをめぐって争われることになる)として追加するよう命じたというニュースが報じられました。

裁判所の予備的訴因の追加要求は、要するに裁判所としてはこの事件は検察の主張する危険運転致死傷罪には問えないので、このままでは危険運転致死傷罪としては無罪とせざるをえない。だから業務上過失致傷罪で有罪とできるようしてくれと検察に申し入れたということである。

二つの裁判で一方は、危険運転致死傷罪として認めながら、他方事件では業務上過失致死罪にしかなりえないと裁判所が判断するのはどういう理由からであろうか。

私の思うところ、運転者の酩酊の度合いが大きく違うことが原因の一つではないかと思う。
危険運転致死傷罪を認めた神戸地裁の場合は、呼気1リットル当たりのアルコール量が、0,83ミリグラムもあったとのことである。この数字は、意識があるのが不思議なくらいの量である。対して福岡地裁の場合は、事故後水を1リットル飲んだらしいが、アルコール量は呼気1リットル当たり、0,25ミリグラムであったという。今では呼気1リットル当たり0,15ミリグラムで酒気帯び運転となるが、しばらく前までは、これが0,25ミリグラムからであった。
要するに一昔前は、酒気帯び運転になるぎりぎりの量だったのである。

裁判官は、同種事犯との刑罰の均衡を非常に気にする。そこで福岡地裁の裁判官は、これまでの事件に比べて比較にならないほど重く罰せられる危険運転過失致傷罪では処断できないと考えたのであろうと私は思う。

検察は訴因の追加に応じるとのことである。本件では裁判官が危険運転致死傷罪では無罪とすると言っているのと同じことであるのだから、予備的訴因の追加もやむなしということであろう。

さてさて福岡地裁の判決が今後どのようなものになるのか。マスコミがそれにどう反応するのかが(不謹慎であるが)楽しみである。
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by kanta5988 | 2007-12-23 09:35 | 法律談義
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