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アルコール依存症にむけて(14)

必死の思いで悩んでいると、一人の男性が、トイレに入ってきたした。
わたしはしばらく迷ったが、こんなところにいつまでもいるわけにはいかない。
そこで勇気を出して、その男性が小水を終わったころを見計らって、助けを呼ぶこととした。

具体的に何を言ったのかまでは覚えていないが、助けてください。中で動けません。救急車を呼んでくださいということだったと思う。

その男性は親切な人で、待っていろと言い、救急車を呼びに行ってくれたようである。
私とは言うと、しばらくすると、体が何とか動かせるようになってきたので、ズボンをはき、トイレの外まで這うようにしてきて出てきて、トイレのドアの横にへたり込んだ。

近くのレストランの店員が、中に入って休んだらどうだというような身振りをしてくれたが、もう一方の店員がくびをふった。私としてもどんな病気か分らないので、もっともだと思った。

救急車をまったのはせいぜい10分程度のことであろう。
待っているうちに私の体調は落ち着いてきた。

救急車で病院に搬送されることになり、私は生れてはじめて救急車に乗った。運ばれた先は北青山病院であった。ベッドに寝かされ、点滴を打たれ、30分ほども安静にしていると、元の状態に戻って行った。そこでお金を支払い、病院を出ることとなった。病名は一過性の高血圧ということであった。

しかしこの症状はしばらくの間私を苦しめることとなった。ところかまわずジーンを体がしびれるようになり、また同じ状態になるのではないかと、絶えずびくびくしていたし、手は震える、ところ構わず便意を催す。高血圧状態が続く。等の症状が出たのである。いまでは心身症ではなかったかと思うが、当時はわけがわからず非常に不安であった。

いつもまた同じ状態になるのではないかと不安であり、不安感が解消されるのは帰神のため新幹線に乗る時ぐらいであった。新幹線の中なら、おかしくなれば乗務員の手助けを得て次の駅で救急車を準備してもらえるであろうし、突然便意を催してもトイレが確保されているからである。

この不安感から逃れられたのは私が青山通り沿いになる、定食屋に入ったときのことであった。
料理を注文して、しばらくすると、また体がジーンとしびれる感覚に襲われる予兆があり、私は、またかとおもいしょげてしまった。

しかしその時はそれだけでは済まなかった。私の体の奥から、惨めな自分に対する、怒りが噴き出てきたのである。それは理由もない怒りであった、自分のすべてが許せなくなり、やみくもな腹立ちが私の内部から、とどめようもなく沸き起こってきたのである。
スペルボーン(Spellborn)